公開日 2024年07月04日

 島根大学地域包括ケア教育研究センターの安部孝文講師、身体教育医学研究所うんなん(島根県雲南市立)の北湯口純副所長・管理研究員らの研究チームが発表した島根県雲南市が推進する「雲南市幼児期運動プログラム」の6年間(2016~2021年)にわたる普及施策を評価した研究が、2024年度日本運動疫学会優秀論文賞を受賞しました。
 雲南市では、2016年以降、教育委員会・子ども政策局が中心となり、「雲南市幼児期運動プログラム(運動プログラム)」の普及啓発に取り組んでいます。運動プログラムの特徴は、文部科学省が策定した「幼児期運動指針(2012)」の3つの柱(①多様な動きが経験できるように様々な遊びを取り入れること、②楽しく体を動かす時間を確保すること、③発達の特性に応じた遊びを提供すること)を踏襲しつつ、0歳以降の全ての月齢(学年)を担当する保育者用の資料として作成されています。さらに、幼児の心身の発達の系統性やその発達段階に応じた経験させたい具体的な運動遊びの環境づくりや言葉かけといった保育者の支援方法が詳細に示されています(詳細は下記のURL参照)。
 子ども政策局が6年間で取り組んだ全14回の研修会の開催や啓発資料の全保育者への配布の成果として、市内の全ての施設(アンケートに回答のあった17施設)が運動プログラムを活用しています。また、保育者らの75%以上が幼児期運動指針の3つの柱に基づいた運動遊びを実践しています。取り組みの一環として、幼児の運動能力測定(わくわくうんなんピック)を市内の就学前施設を対象に継続して実施しています。この測定結果から、2016年を基準年とした場合、その後の調査で「ソフトボール投げ」と「25m走」は年中児・年長児で向上していました。ただし、立ち幅跳びは低かったため、今後も多様な遊びの経験が必要であることが示されました。以上のことから、発育発達の基礎である幼児期の健全な育成そして体力づくりの観点からも、幼児期に適切な運動や遊びの機会確保ができるよう行政による普及啓発の重要性を示しています。
 この成果は、日本運動疫学会の学術誌に掲載されています(2023年5月19日受理、2023年5月29日付けで、オンライン上で公開)。

【論 文】 PAIREMモデルを用いた保育者を対象とする幼児期運動プログラムの普及施策の実装評価
【著 者】安部孝文、北湯口純、福島教照、鎌田真光、岡田真平、田中千晶、井上茂、武藤芳照
【掲載誌】運動疫学研究 2023 年 25 巻 2 号 p.152-162
【論文URL】https://doi.org/10.24804/ree.2304

調査研究の一部は、文部科学省の補助(JSPS科研費:19K11500、19K14152、22K17752)を受けて行われました。

雲南市幼児期運動プログラムについては雲南市役所子ども政策局ホームページに掲載されています。
https://www.city.unnan.shimane.jp/unnan/kosodate/soudan/appr02.html

20240630_JAEE授賞式  表彰状

 【問合せ先】
 島根大学 研究学術情報本部 地域包括ケア教育研究センター
 講師 安部 孝文
 電話:0853-20-2586