公開日 2023年05月26日

 島根大学地域包括ケア教育研究センターの安部孝文助教、磯村実センター長、そしてルンド大学プライマリヘルス研究センター(スウェーデン)の奥山健太らの研究チームは、島根県内自治体との共同研究の一環として集団健康診査に参加された地域住民の健康データを分析したところ、高齢者の柔軟運動(ストレッチング)の実施が血圧の長期的な低下に役立つ可能性を明らかにしました。
 高血圧は、脳卒中などの重大な疾患を引き起こす原因であるため、定期的な運動による予防が大切です。これまで、運動の種類として、ウォーキングのような有酸素運動については、エビデンスが確立しており推奨されてきました。近年、身体の柔軟性が高血圧の予防に寄与するとの知見が報告されており、身体の柔軟性を保つ柔軟運動の大切さが注目されています。そこで、地域包括ケア教育研究センターでは、これまで蓄積したデータをもとに、柔軟運動の実施頻度と5年後の血圧の変化に与える影響を分析しました。その結果、1週間あたりの柔軟運動の実施頻度が増えるほど収縮期血圧の低下を認めました。また拡張期血圧は、週当たり3回の柔軟運動の実施が有意に血圧の低下と関連することがわかりました。以上のことから、ウォーキングなどの有酸素運動はもちろんですが、柔軟運動も取り入れることの必要性を明らかにしました。
 この成果は、スポーツ医学のトップジャーナルの一つである学術英文誌「Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports」に掲載されています(2023年4月24日受理、5月11日付けで、オンライン上で有料公開)。

【論 文】Association between flexibility activity and blood-pressure change among older adults in Japan: A 5-year longitudinal study
【著 者】Takafumi Abe, Kenta Okuyama, Masamitsu Kamada, Jun Kitayuguchi, Tsuyoshi Hamano, Hidefumi Waki, Toru Nabika, Minoru Isomura, Kristina Sundquist
【掲載誌】Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports
【論文URL】http://doi.org/10.1111/sms.14386

 本調査研究は、文部科学省等の補助を受けて行われました。

【お問合せ先】
島根大学 研究学術情報本部 地域包括ケア教育研究センター
助教 安部 孝文
電話:0853-20-2586